解決事例

2025/04/21 解決事例

滞留金型の保管費用につき多額の回収を果たした事案

法執行のトレンドを読み解くことの重要性
~滞留金型の保管費用を巡る事案を例に~

製造業を営む依頼者は、取引先である上場会社との取引において、長期間にわたり滞留金型の保管費用を負担する不合理を強いられてきました。当職からは、下請法ないし独禁法の最新トレンドを踏まえた交渉上の戦略に関する助言を行い、そのせいもあって依頼者は当初の期待を上回る多額の回収を実現できました。

近年、下請法ないし独禁法のエンフォースメント(執行)が厳格化されています。なかでも、金型を巡る問題に対する取り締まりはとても強化されています。かつては、上場会社がその強い交渉力を背景に、委託先に対して保管費用を転嫁してきたケースが多く存在していました(今も存在しています)。こうした慣行は、大企業から受注する中小企業にとって大きな負担となり、公正な取引とはいいがたい現実が存在してきました。

金型は、高額な投資がなされる製造プロセスにおいて不可欠なツールです。これらは製品の品質を左右する重要な資産である一方、取引が一段落した後や生産のタイミングがずれる場合には、長期間にわたる保管を余儀なくされることも少なくありません。
その際、保管環境の維持(温度管理、湿度管理、適切なセキュリティ設備など)や万一の損傷防止のための特別な管理が求められるため、保管費用が思いのほか高額化することも珍しくありません。しかし、この費用がしばしば一方的に受託側の負担とされ、受注者たる中小企業にとって大きな負担となってきました。

迅速でポイントを絞った依頼者との必要十分な協議を経て、金型を巡る契約の内容及び実際の取引状況について概括的な理解を図りました。その上で、下請法ないし独禁法の最新動向を踏まえ、上場会社が行政当局の指導に逆らいづらい状況にあることを念頭に置き、いわば隠れた交渉材料として、依頼者自身が上場会社相手に強気の交渉を行いました。これにより、最終的に依頼者は従前不当に負担させられてきた高額な金型保管費用につき、多額の回収に成功しました。

こうした事案を見るにつけ、滞留金型の保管費用という特有の問題を正確に理解し、行政動向を的確に捉えた上での戦略的対応の重要性を思わずにはいられません。依頼者は、今回の成果を今後の契約条件の見直しや、不合理な負担ないし不利益防止の方策を構築するための長期的な成果につなげることができました。

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